『アイヌ民譚集』編訳:知里真志保(岩波文庫)

アイヌの昔話

『アイヌ民譚集 付,えぞおばけ列伝』【岩波文庫】
編訳:知里真志保
発行元:岩波書店(岩波文庫 赤81-1)
発行日:1981年7月16日初版
サイズ:文庫サイズ・298ページ/横書き
定価:720円(2017年・税別)

「アイヌ民潭集」
15篇収録/アイヌ語・日本語対訳(アイヌ語はローマ字表記)
「えぞおばけ列伝」
27篇収録/日本語訳

▽知里真志保(ちり・ましほ/1909-1961)
アイヌの言語学者、民族研究者。『アイヌ神謡集』の著者・知里幸恵の弟。北海道幌別町字登別町(現在の登別市)出身。
室蘭中学校(現在の北海道室蘭栄高等学校)卒業。経済的に進学できず役所に勤めるが、金田一京助に助けられ第一高等学校、東京帝国大学に進学し、1937年3月に文学部言語学科を卒業、同大学院に進学。
1940年に樺太庁豊原高等女学校の教員になるとともに樺太庁博物館の研究員を兼務。
1943年に北海道帝国大学北方文化研究室嘱託となる。
1949年、北海道大学法文学部専任講師となる。1954年12月22日に文学博士の学位を授与される。
1958年に北海道大学教授に就任する。退官後は同名誉教授となる。
もともと心臓が悪く、1961年(昭和36年)6月9日に鬱血性心不全で52歳の若さで亡くなる。

『アイヌ民潭集』は本来、アイヌ言語資料として記録され、昭和12年(1937年)に刊行されたものである。

家庭の事情で、姉の幸恵はアイヌ語を使う祖母とともに旭川で育ち、弟の真志保は両親とともに登別で育った。幸恵はアイヌ語も日本語も母語として使ったが、真志保は周囲がアイヌ語を使わない環境で育ち、一高に入ってからアイヌ語を勉強するようになった。
『アイヌ民潭集』は真志保がアイヌ語を学び始めたころ、故郷の北海道幌別村(胆振地方)でアイヌの老婆(伯母の金成マツ子ほか)から聞き取った胆振方言の記録を整理したもの。
散文の昔話から「パナンペ説話(パナンペ・ペナンペ譚)」を選んで訳出。

岩波文庫『アイヌ民譚集 付,えぞおばけ列伝』は、郷土研究社刊行の知里真志保著『アイヌ民潭集』(1937年4月発行)に、ぷやら新書刊行会刊行の『えぞおばけ列伝』(1961年4月発行)を合わせて1冊とする。知里真志保著は知里真志保編訳とした。
本文は現代仮名遣いによる表記に改め、漢字語の一部をかな書きに変えた。
『アイヌ民潭集』は15話、『えぞおばけ列伝』は27話収録。

岩波文庫の解説は関敬吾。日本の民俗学者、文化人類学者。専門は口承文芸、昔話研究。岩波文庫『日本の昔ばなし』の編者。

アイヌ民譚集 – 岩波書店
出版社商品紹介

>アイヌに伝わる数々の昔話のうち,とくに「パナンペ説話」を選んで訳出したもの.巧智を発揮して成功するパナンペをみたペナンペは,それを羨んで真似するがかえってひどい目にあうばかり.野趣に富む痛快な物語十五篇を収める.併収は,人間くさいおばけが次々と登場する「えぞおばけ列伝」. (解説 関 敬吾)

▽収録内容(目次)

 序(金田一京助)昭和10年2月

◇アイヌ民潭集
I Panampe opke orushpe(パナンペ放屁譚)
II Panampe herepashi yorpuye makaka(パナンペ沖へ向つて肛門を開く)
III Panampe oninkot(パナンペ尻滑り)
IV Panampe konru shimpui kar wa oro chiyehe eushi(パナンペ氷に穴をあけてそこへ■(へのこ)を差す) ※■=門+牛
V Panampe chiyehe Matomai eush(パナンペの陰茎松前に逹す)
VI Panampe uraye oeshke-chi ush(パナンペの簗に怒陽がはいる)
VII Panampe tepaha mom(パナンペの褌が流れた)
VIII Panampe sush awa tepaha mom(パナンペ水浴すると褌が流れた)
IX Panampe shiraire(パナンペ死んだ真似をする)
X Panampe tekehe chikiri pise kotuk(パナンペの手足に浮袋がひっつく)
XI Humpe huchi akomui kusu-ne(鯨婆さ、ん虱を取りましょう)
XII Panampe shirokani poshta akore(パナンペ銀の小犬を授かる)
XIII Penampe Panampe orowa menoko ne akar(ペナンペパナンペに女にされる)

▽附録
XIV Teta-onchiko Auta-onchiko uwepeker(「内の爺さん隣りの爺さん」の話)
XV Auta wenshisam teta wenshisam(隣家の貧しい和人と此家の貧しい和人)
 
 後記(知島志保))昭和10年2月

◇えぞおばけ列伝
▽えぞおばけ列伝
1.へっぴりおばけ
2.へっぴりおやじの話
3.原ぺこおばけ
4.地下のおばけ
5.地下に没したおばけ
6.シルクル魔
7.飢饉魔
8.人呼びおばけ
9.魔の呼び声 ―付 幻聴・幻視のなどのこと
10。やかんおやじ
11。戸を欲しがるおばけ
12。空家の留守番
13。たいまつおばけ
14。一つ目の大入道
15。人食いおばけ
16。竜蛇の話
17。フクローとおばけ
18。淫魔の話
19。水辺に住む魔女 ―コタン版ローレライの伝説―
20。木原の姥

▽アイヌ艶笑談
1.閣下とメノコ
2.人間の隠し所
3.人間の季節
4.刃物をとぐような身振り
5.ばけあなの話
6.狩人ものがたり
7.ラッコ狩り奇談

 註解
 解説(関敬吾)

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